「イチローの打席に入る前の動き、なぜ毎回同じなの?」「大谷翔平選手は本当に10時間も寝ているの?」「ラグビーの五郎丸ポーズって何のため?」
一流のアスリートほど、試合前や普段の生活の中に「ルーティン」と呼ばれる決まった習慣を持っています。打席に入る前の動作から、毎日の食事や睡眠、ちょっと笑ってしまうような験担ぎまで、その中身は実にさまざまです。
📌 この記事で分かること(要点まとめ)
- ルーティンとは:ジンクス・ゲン担ぎとの違い
- 日本の野球選手のルーティン:イチロー、大谷翔平、山本由伸、松井秀喜
- メジャーリーガーの驚きの習慣:毎日鶏肉を食べた「チキンマン」など
- 野球以外の一流アスリート:五郎丸歩、ナダル、ジョーダン、フェルプスほか
- 今日からできる:自分だけのルーティンの作り方4ステップ
今回は、硬式野球ボールメーカーのリボルド編集部が、野球選手を中心に一流アスリートのルーティンを20個厳選し、思わず誰かに話したくなる雑学とともにご紹介します!

1. ルーティンとは?ジンクス・ゲン担ぎとの違い
ルーティン(routine)とは、もともと英語で「決まった手順」「日課」という意味の言葉です。スポーツの世界では、試合や大事なプレーの前に、毎回同じ順番でくり返す動作や習慣のことを指します。
よく似た言葉に「ジンクス」や「ゲン担ぎ」がありますが、意味は少しずつ違います。

| 言葉 | 意味 | 野球での例 |
|---|---|---|
| ルーティン | 自分で決めて、毎回くり返す手順。集中力を高め、いつもの実力を出すためのもの | 打席に入る前の決まった動作 |
| ジンクス | 「こうすると、こうなる」という言い伝え。良い意味にも悪い意味にも使う | ノーヒットノーラン中の投手には話しかけない |
| ゲン担ぎ | 縁起の良いことをして、良い結果を呼び込もうとすること | 勝った日と同じ食事・同じ靴下で試合に臨む |
ポイントは、ルーティンは「自分でコントロールできる準備」だということ。運に任せるゲン担ぎとは違い、毎回同じ準備をすることで心と体を「いつもの状態」に整える、れっきとした技術なのです。
2. 日本の野球選手のルーティン
まずは、日本が誇るトップ選手たちのルーティンです。
① イチロー:打席での「バットを立てる」動作
イチロー氏といえば、打席に入ると右手でバットを投手の方向へまっすぐ立て、左手で右肩のユニフォームの袖をくいっと引く一連の動作。日米通算4367安打を放つ間、この動作はほとんど変わりませんでした。
毎回まったく同じ動きをすることで、その日の体の状態や、ほんのわずかなズレに気づきやすくなります。少年野球の子どもたちがこぞってマネをした、最も有名な野球のルーティンと言えるでしょう。
② イチロー:「朝カレー」の真相
マリナーズ時代のイチロー氏は、朝食にカレーを食べていたことで知られ、「朝カレー」ブームのきっかけにもなりました。毎日同じものを食べれば、体調の変化に気づきやすいという考え方です。
③ イチロー:トレーニングマシンと道具へのこだわり
イチロー氏は、初動負荷トレーニングのマシンを自宅やキャンプ地に置き、日々の体づくりを欠かしませんでした。重いウエイトで筋肉を大きくするのではなく、関節の可動域や体のしなやかさを保つためのトレーニングです。
また、グラブやスパイク、バットといった道具を大切に扱うことでも有名でした。「準備というのは、言い訳の材料となり得るものを排除していくこと」という本人の言葉どおり、結果が出なかったときに言い訳になりそうなものを、毎日の習慣で一つずつ消していったのです。
④ 大谷翔平:何よりも「睡眠」を優先
大谷翔平選手のルーティンで有名なのが、睡眠へのこだわりです。夜に約10時間眠り、試合前には昼寝もすると報じられています。寝具メーカーの西川とは2017年からコンディショニングサポート契約を結んでおり、2026年で10年目を迎えました。
本人も睡眠を「僕にとって最大のリカバリー」と語っています。投手と打者の「二刀流」を続けられる秘密は、地味ですが何より大切な「よく寝る」習慣にあるのです。
⑤ 大谷翔平:目標達成シートと「ゴミ拾い」
大谷選手は花巻東高校1年生のとき、9×9の81マスからなる「目標達成シート(マンダラチャート)」を作りました。中心に書いた目標は「ドラフト1位で8球団から指名を受ける」こと。その周りに「体づくり」「メンタル」「スピード160km/h」などの要素を並べ、さらにそれぞれを達成するための具体的な行動まで書き込みました。
その中の「運」という項目に書かれていたのが「ゴミ拾い」。メジャーの舞台に立った今も、グラウンドに落ちたゴミをさっと拾う姿がたびたび話題になります。高校時代の恩師・佐々木洋監督の「ゴミは人が落とした運」という教えを、今も習慣として続けているのです。
⑥ 大谷翔平:打席に入るときの「あいさつ」
大谷選手は打席に入るとき、球審にあいさつをすることで知られています。審判の証言をもとに海外メディアでも紹介され、その礼儀正しさが称賛されました。相手への敬意を忘れない姿勢も、大谷選手が世界中で愛される理由の一つです。
⑦ 山本由伸:やり投げトレーニング
ドジャースの山本由伸投手は、やり投げのような動きのトレーニング(フレーチャ)や、ブリッジ、呼吸法など、トレーナーの矢田修氏に学んだ独自のメニューで知られています。小さな野球ボールなら手首や腕の動きでごまかせても、やりは全身のバランスが整っていないとまっすぐ飛びません。投球フォームのチェックにも役立つというわけです。
当初は「風変わりな練習」と注目されましたが、山本投手は2025年のワールドシリーズで第6戦に先発勝利、第7戦では中0日でリリーフ登板して勝利投手となり、シリーズMVPに輝きました。今ではドジャースのチームメートにも、このやり投げトレーニングが広まりつつあるそうです。
⑧ 松井秀喜:長嶋監督との「素振り」
巨人時代の松井秀喜氏は、長嶋茂雄監督とマンツーマンで素振りを重ねたことで知られています。長嶋監督が確かめていたのは、フォームの見た目だけでなく、バットが空気を切る「音」。調子が良いときと悪いときでは音が違うのだそうです。
この師弟の素振りが、のちにメジャーでワールドシリーズMVPに輝くゴジラを育てました。そして松井氏は2026年10月、長嶋氏が監督として最初に背負った背番号90をつけて、巨人の監督に就任しています。

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3. メジャーリーガーの驚きのルーティン&ジンクス
野球の本場アメリカには、「そこまでやる!?」と驚くような独特のルーティンを持つ選手がたくさんいました。
⑨ ウェイド・ボッグス:毎日鶏肉を食べた「チキンマン」
レッドソックスなどで活躍し、通算3010安打を放った殿堂入り三塁手ウェイド・ボッグス。彼は試合前にほぼ毎日鶏肉料理を食べたことから「チキンマン」と呼ばれ、鶏肉のレシピ本まで出したほどです。

さらに、打撃練習は17時17分、ダッシュは19時17分に始めるなど、1日の行動が分刻みで決まっていました。打席に入る前には、土の上に「生命」を意味するヘブライ語「Chai(ハイ)」を書いていたことも有名です。
⑩ ターク・ウェンデル:イニングの合間に歯みがき
カブスやメッツで活躍したリリーフ投手ターク・ウェンデルは、球界屈指の「ルーティン王」。登板中は甘草(リコリス)のキャンディをかみ、イニングの合間にベンチで歯をみがくのが決まりでした。マウンドへ向かうときにはファウルラインを踏まないよう、大きくジャンプして跳び越えていました。
⑪ ノマー・ガルシアパーラ:毎球の「手袋締め直し」
レッドソックスの名遊撃手ノマー・ガルシアパーラは、打席で1球ごとにバッティンググローブのマジックテープを締め直し、つま先で地面をトントンとたたく動作をくり返しました。その動きは、当時の子どもたちや野球ファンがこぞってモノマネするほど有名になりました。
⑫ 野球界の定番ジンクス:ファウルラインを踏まない
プロ野球やメジャーの試合をよく見ると、守備につく選手やベンチに戻る選手が、白いファウルラインをわざとまたいで歩く姿をよく見かけます。「ラインを踏むと縁起が悪い」という、野球界で古くから伝わるジンクスです。もちろん全員が守っているわけではありませんが、注目して見ると意外なほど多くの選手がラインを避けています。
⑬ ノーヒットノーラン中は「話しかけない」
投手がノーヒットノーランを続けているとき、ベンチではその投手に話しかけない、「ノーヒッター」という言葉を口にしないのがお約束。口にすると記録が途切れる、というジンクスです。実況や解説者の間でも、あえてその言葉を避ける人がいるほど浸透しています。

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4. 野球以外の一流アスリートのルーティン
ルーティンは野球選手だけのものではありません。世界のトップアスリートたちも、それぞれ独自の習慣を持っています。
⑭ 五郎丸歩(ラグビー):「五郎丸ポーズ」
2015年のラグビーワールドカップで日本中に知られたのが、プレースキックの前に両手を合わせて拝むようなポーズをとる五郎丸歩選手のルーティンです。メンタルコーチの荒木香織氏の助言を受けて作り上げた、キックの成功率を安定させるための一連の動作でした。
日本代表はこの大会で南アフリカを34対32で破る歴史的勝利を挙げ、「ブライトンの奇跡」と呼ばれました。「五郎丸(ポーズ)」はこの年の新語・流行語大賞のトップテンにも選ばれ、子どもたちの間でもマネが大流行しました。
⑮ ラファエル・ナダル(テニス):ボトルの向きをそろえる
全仏オープンで前人未到の14度の優勝を果たしたナダルは、ルーティンの多さでも有名でした。ベンチでは2本のドリンクボトルをラベルの向きまできっちりそろえて並べ、サーブ前には髪や服を決まった順番で整え、コートのラインを踏まないように歩きます。2024年に現役を引退しました。
⑯ セリーナ・ウィリアムズ(テニス):連勝中は同じ靴下
四大大会シングルスで23度の優勝を誇るセリーナ・ウィリアムズは、勝ち続けている間は同じ靴下をはき続けたと本人が語っています。どんな女王でも、ちょっとしたゲン担ぎで心を落ち着けていたのです。
⑰ マイケル・ジョーダン(バスケットボール):大学時代のショーツ
「バスケットボールの神様」マイケル・ジョーダンは、NBAの試合でシカゴ・ブルズのユニフォームの下に、ノースカロライナ大学時代のショーツをはいていたと言われています。大学時代に全米制覇を果たした思い出のショーツを隠すために、ユニフォームのショーツを長めにしたという説もあるほどです。
⑱ マイケル・フェルプス(競泳):スタート前の腕振り
五輪で通算23個の金メダルを獲得したマイケル・フェルプスは、スタート台の後ろで両腕を大きく振り回し、背中をたたく独特の動作で知られています。筋肉をほぐしてスタートに備えると同時に、気持ちを一気にレースモードへ切り替えるスイッチでした。
⑲ クリスティアーノ・ロナウド(サッカー):90分単位の睡眠
40歳を過ぎてもトップレベルでプレーを続けるロナウドは、睡眠コーチのニック・リトルヘイルズ氏の助言を受け、90分を1単位として睡眠を組み立てる方法を取り入れたと報じられています。大谷選手と同じく、一流ほど「休み方」にこだわっていることが分かります。
⑳ オールブラックス(ラグビー):試合前の「ハカ」
ラグビーのニュージーランド代表「オールブラックス」は、試合前に先住民マオリの伝統的な踊り「ハカ」を披露します。100年以上の歴史を持つチームの儀式で、相手への敬意を示すとともに、選手一人ひとりの闘志を高める、チーム全体のルーティンと言えるでしょう。

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5. なぜ一流はルーティンを大切にするのか?
スポーツ心理学では、プレーの直前に行う決まった手順を「プレ・パフォーマンス・ルーティン」と呼び、研究が進められています。ルーティンには、次のような役割があると考えられています。
- 集中のスイッチになる:決まった動作をすることで、雑念を払い、目の前のプレーに意識を向けやすくなる
- 緊張をコントロールしやすくなる:大舞台でも「いつもと同じ」ことをすることで、心を落ち着かせやすくなる
- 小さな変化に気づける:毎回同じ動きをするからこそ、体の調子のズレに早く気づける
- 結果に振り回されなくなる:「ルーティンをやり切れたか」という、自分でコントロールできることに意識を向けられる
ただし、ルーティンは魔法ではありません。「これをやらないと打てない」と縛られすぎると、逆に不安のもとになってしまうこともあります。大切なのは、自分を整えるための道具として使いこなすことです。
6. 今日からできる!自分だけのルーティンの作り方
ルーティンは、プロだけのものではありません。少年野球や草野球、さらには仕事のプレゼンや試験の前など、日常のさまざまな場面で役立ちます。

| 場面 | ルーティンの例 |
|---|---|
| 打席に入る前 | 深呼吸を1回 → バットの先で両足のスパイクを軽くたたく → 投手を見て構える |
| マウンドで投げる前 | ロジンに触れる → 帽子のつばを触る → 捕手のミットを見て「低く」と心の中で言う |
| 試合の前日・当日 | 同じ時刻に寝て起きる、同じ朝食をとる、道具を同じ順番でバッグに入れる |
| 仕事・勉強の前 | 机の上を整える → 深呼吸 → 最初の5分でやることを声に出す |
コツは、短く、シンプルに、練習の時から毎回くり返すこと。そして結果ではなく「ルーティンをやり切れたか」で自分を評価することです。
7. ルーティンに関するよくある質問(Q&A)
Q. 「ルーティン」と「ルーチン」はどちらが正しい?
A. どちらも英語の「routine」をカタカナにしたもので、意味は同じです。スポーツの世界では「ルーティン」、パソコンや業務の世界では「ルーチン(ルーチンワーク)」と書かれることが多い傾向があります。
Q. ルーティンはどれくらいの長さがいい?
A. 打席やキックの前に行うものなら、数秒〜十数秒で終わる短いものがおすすめです。長すぎると試合の流れの中で崩れやすく、野球ではピッチクロックなどの時間制限にもかかってしまいます。
Q. ルーティンができなかったら失敗する?
A. そんなことはありません。ルーティンはあくまで自分を整えるための道具です。できなかったときに慌てないよう、「深呼吸だけはする」といった最小限の形を決めておくと安心です。
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8. まとめ:一流は「いつも通り」を作る天才
イチロー氏の打席での動作、大谷翔平選手の睡眠、山本由伸投手のやり投げ、五郎丸選手のポーズ。一流アスリートのルーティンに共通しているのは、大舞台でも「いつも通りの自分」でいるための工夫だということです。
次に野球観戦をするときは、ぜひ選手たちが打席に入る前やマウンドで見せる「小さな動き」に注目してみてください。そこには、何千回、何万回とくり返してきた一流の準備が詰まっています。そして、あなた自身の毎日にも、小さなルーティンを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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